無職ゲーマーの生きる道

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青春の記憶【1000字モノガタリ】

とある高校の廃校が決まった。少子化が進む今、珍しい話でもない。

野球部員は13人。最後の夏を迎えていた。

勝利を目的としたチームではない。

監督も名前を借りているだけの国語教師だ。

例年通り初戦敗退だろう。誰もがそう思っている。

「最後だしみんなで楽しもう」

ありきたりの言葉しか出てこないキャプテンの凡並(ボンナミ)。

試合が始まると、いつもと様子が違う。

そう、スタンドから声援を送る人たちがいる。

吹奏楽部は存在しない。

一般生徒がわざわざ球場に足を運ぶはずもない。

ならば誰が?

スタンドには10人ほどのババア軍団が襲来していた。

今まで一度だって見に来たことなんか無いくせに。ルールすら分かっていないくせに。

だからといって何も変わらない・・・

試合は3回まで進み、スコアは7-0。

いつも通り、何も変わらない。

しかし、ここでババア共に不穏な動きが。何かを作っているみたいだ。

そのまま試合は進み、5回表が終了して13-0。

裏の攻撃で4点以上取らないとコールド負けである。

ここでタイミングが良いのか悪いのか、ババア共が作っていたものが完成する。

模造紙をつなぎ合わせて作った、なんともみすぼらしい横断幕だ。

醜い顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら声援を送る。

 

記録より記憶に残る1点を

 

少年たちの表情が変わる。おそらく、感じたものは全員同じであろう。

はじめての一体感。口にしなくても皆が震えている。

この状況は相手ピッチャーにも少なからず影響を与えた。

1番レフト 当屋(アタリヤ)

デッドボール。

ランナーが出た。

2番セカンド 歯車(ハグルマ)

送りバントを決める。

そして打席には3番の猿山(サルヤマ)。

何の努力もせず、目標もない。群れて威勢を張ることしかできないお山の大将。

ただ野球は上手い。皆が分かっている。

「点が入るかもしれない」

黄色にはほど遠い声援が響き渡る。

初球。ピッチャーのモーションに合わせて猿山の膝が曲がる。

送りバントだ。

2アウトランナー3塁。

はじめての自己犠牲。

ベンチに戻る猿山と、打席に向かう凡並が言葉を交わす。

「今日夕飯おごりな」

「なんでだよ!お前が勝手にやったんだろっ」

二人は笑顔だ。

はじめての信頼感。

そして

「キーーン」

真夏の青空に金属音が響き渡る。

それは記憶に刻まれる歓喜の音か

はたまた夢の終わりを告げる時計の音か

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この物語はフィクション、だと思います。